測地線方程式のアフィンパラメータ

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概要

 重力以外の外力が何も存在しない場合,粒子の軌道は,その運動方程式である測地線の方程式 (geodesic equation)
\begin{align}
\dfrac{d^2 x^{\alpha}}{d\lambda^2} + \Gamma^{\alpha}{}_{\beta\gamma} \dfrac{dx^{\beta}}{d\lambda}\dfrac{dx^{\gamma}}{d\lambda} = 0 \tag{1}
\end{align}
によって描かれます.この \(\lambda \) をアフィンパラメータ (affine parameter) というのでした.ここでは,なぜパラメータがアフィンなのか,つまり,なぜパラメータのアフィン変換に対して不変となるのかについて証明をしていきましょう(アフィン変換とはざっくり言えば平行移動と線形変換を組み合わせた変換です).

証明

 まず,曲線の新たなパラメータを \( s = f\left(\lambda \right)\) として \(\lambda \) から \( s\) への変換を考えましょう.そして,この変換に対して測地線方程式が不変となる条件,つまり関数 \( f \left(\lambda \right)\) の条件を求めていきます.準備として,以下の \(\lambda \) についての微分を用意しておきます:
\begin{align}
&\dfrac{d}{d\lambda} = \dfrac{ds}{d\lambda} \dfrac{d}{ds} = f’\dfrac{d}{ds}, \tag{2} \\
&\dfrac{d^2}{d\lambda^2} = \dfrac{d}{d\lambda} \left(f’\dfrac{d}{ds}\right) = f^{\prime\prime} \dfrac{d}{ds} + f’^2 \dfrac{d^2}{ds^2} \tag{3}
\end{align}
そうすると,(1) 式に (2)と(3)式を代入することで,以下のように変形できます:
\begin{align}
0 &= \dfrac{d^2 x^{\alpha}}{d\lambda^2} + \Gamma^{\alpha}{}_{\beta\gamma} \dfrac{dx^{\beta}}{d\lambda}\dfrac{dx^{\gamma}}{d\lambda} \\
&= \left(f^{\prime\prime} \dfrac{dx^{\alpha}}{ds} + f’^2 \dfrac{d^2x^{\alpha}}{ds^2}\right)
+ \Gamma^{\alpha}{}_{\beta\gamma} f’^2 \dfrac{dx^{\beta}}{ds}\dfrac{dx^{\gamma}}{ds} \\
&= f’^2 \left[ \dfrac{d^2 x^{\alpha}}{ds^2} + \Gamma^{\alpha}{}_{\beta\gamma} \dfrac{dx^{\beta}}{ds}\dfrac{dx^{\gamma}}{ds} + \dfrac{ f^{\prime\prime}}{f’^2} \dfrac{dx^{\alpha}}{ds}\right] \tag{4}
\end{align}
したがって,測地線の方程式の形が変わらないためには,\(f\left(\lambda \right)\) の2階微分が0,つまり\(f^{\prime\prime} = 0\) が必要なことがわかります.よって,測地線方程式はアフィン変換
\begin{align}
f \left(\lambda \right) = a \lambda + b \ \left( a, b = \text{const} \right) \tag{5}
\end{align}
に対して不変となることが証明できました.

注意点

 ここから次のことがわかります.あるパラメータの下でヌル測地線であれば,アフィンパラメータをどのようにとってもヌル測地線のままです.同様に,あるパラメータで時間的 (空間的 ) 測地線であれば,アフィンパラメータをどのようにとっても時間的 (空間的 ) 測地線のままです( \(u^{\mu} = \frac{d x^{\mu}}{d\lambda}\) に対して,\( u^{\mu}u_{\mu} = 0\) のときヌル測地線,\( u^{\mu}u_{\mu} < 0\) のとき時間的測地線,\( u^{\mu}u_{\mu} > 0\) のとき空間的測地線と言います).

 アフィンパラメータが自由に取れるとはいっても,どのようなパラメータが適切なのか自然なのか気になるところです.通常の質量を持つ粒子であれば時間的測地線になるため,\( u^{\mu}u_{\mu} = -1 \) とパラメータを設定すると,いろいろな式がシンプルになって都合が良さそうです.これはよく見ると粒子の4元速度 \( u^{\mu} = \frac{1}{c} \frac{dx^{\mu}}{d \tau}\) に対応するときです.つまり,アフィンパラメータを粒子の固有時 \(\tau \) を光速度 \( c\) 倍したものに設定したときに対応しています.

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この記事を書いた人

物理から足を洗いましたが、手書きノートが家に大量にあるため、後学のため少しずつ記事にしていこうと思います。更新頻度はとてもゆっくりです。

Eメール:mogumogu[at]harimogu.jp

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