重力場中の電磁気学

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曲がった時空間でのマクスウェル方程式

 ここでは,重力場が存在する下での,曲がった時空間でのマクスウェル方程式を考えていきます.マクスウェル方程式自体は難しいことはなくて,平坦な時空でのマクスウェル方程式の (6) 式と (7) 式の微分を共変微分に変更をするだけで,\( \partial_{\mu} \rightarrow \nabla_{\mu} \) として,
\begin{align}
&\nabla_{\nu}F^{\mu\nu} = {\mu}_0 j^{\mu}, \tag{1} \\
&\nabla_{\mu}F_{\nu\ell}+\nabla_{\nu}F_{\ell\mu}+\nabla_{\ell}F_{\mu\nu}=0 \tag{2}
\end{align}
となります.電磁場テンソル \(F_{\mu\nu} \) も同様に,ここの (5) 式を \( \partial_{\mu} \rightarrow \nabla_{\mu} \) として,
\begin{align}
F_{\mu\nu} \equiv \nabla_{\mu} A_{\nu} – \nabla_{\nu} A_{\mu} \tag{3}
\end{align}
とすれば大丈夫です.

ローレンツゲージ


 平坦な時空のときと同様に,\(F_{\mu\nu}\) はゲージ変換 \(A_{\mu} \to A_{\mu} + \nabla_{\mu} \chi\) に対して不変になります.そこでゲージとして,ローレンツゲージ
\begin{align}
\nabla_{\mu} A^{\mu} = 0 \tag{4}
\end{align}
をとると (これは平坦な時空の場合の (7) 式に対応),マクスウェル方程式は
\begin{align}
\nabla_{\nu} A^{\mu\nu}
&= \nabla_{\nu} \nabla^{\mu} A^{\nu} – \nabla_{\nu} \nabla^{\nu} A^{\mu} \\
&= \left( \nabla^{\mu}\nabla_{\nu}A^{\nu} + R^{\nu}{}_{\alpha\nu}{}^{\mu}A^{\alpha} \right) – \nabla_{\nu}\nabla^{\nu} A^{\mu} \\
&= R_{\alpha}{}^{\mu}A^{\alpha}- \nabla_{\nu}\nabla^{\nu} A^{\mu} \tag{5}
\end{align}
となります.そこで,曲がった時空上でのダランベルシアンを \(\Box_{g} \equiv g^{\alpha\beta}\nabla_{\alpha}\nabla_{\beta}\) とすれば,最終的にマクスウェル方程式は
\begin{align}
\Box_{g} A^{\mu} – R^{\mu}{}_{\nu}A^{\nu} = -\mu_0 j^{\mu} \tag{6}
\end{align}
に帰着します.平坦な時空の場合の (8) 式と比較をすると,重力場の効果でリッチテンソル \( R^{\mu}{}_{\nu}\) が追加されているのがわかります(リッチテンソルは時空の曲率を表していますので,平坦な時空の場合には曲率は0となり,平坦な時空の場合と一致します).

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この記事を書いた人

物理から足を洗いましたが、手書きノートが家に大量にあるため、後学のため少しずつ記事にしていこうと思います。更新頻度はとてもゆっくりです。

Eメール:mogumogu[at]harimogu.jp

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